駒ヶ岳ファンクラブ

「駒ヶ岳ファンクラブ」は、日本各地の駒ヶ岳の豊かな自然を愛し、駒ヶ岳山麓の人と交流し、その山麓の文化に親しみ、日本各地の駒ヶ岳に登る」を目的とした会員からなる団体です。

初冬の徳本峠へ

木本 桂春
 秋の入り口で昔の本を読んでいた。
 昭和16年、太平洋戦争の頃、息子と初冬の穂高周辺に山行した登山家・塚本繁松はこの時のことを「山・親心子心」に以下のように記していた。
―この山旅が終わって神河内へ出ると、息子は学校へ急ぐからバスで帰ると言い出した。時は11月の末、まだバスは通っていた。私は、初めて神河内に入って徳本峠を通らないで帰すわけにいかないと頑張った。息子は頗る不服であったがついて来た。
 峠の頂上で新雪穂高を振り返った時、彼はそこで驚嘆の声を発しない訳に行かなかったのである。そして来てよかったと頻りに喜んだ。―

 これを読み、よし徳本峠に行こう!と決めチャンスを待ち、14日今シーズン最終バスに乗った。3時に家を出て上高地へ、7時過ぎに歩き出す。早朝の河童橋付近は人もいなく閑散としていた。

      

f:id:komafun:20211116204814j:plain明神から黒沢へ入り、雪の少ない道を登る。
 晴れているが寒気鋭く冷たい。2000m付近、積雪は20-30cm、パウダー状で軽く、長靴を鳴らして歩く。
富山の山は1500mを越えると雪が多くカンジキなしでは登れない。
      

f:id:komafun:20211116204836j:plain4時間ほどで峠着。誰もいなかった。途中で出会った人3名。
       

f:id:komafun:20211116204901j:plain振り返れば峠からの穂高が雪を纏い厳然と立っていた。
昭和16年の親子の思いが心からわかった。
       

f:id:komafun:20211116204921j:plain積雪があるので1800m付近までは楽に下る。
上高地は最後の人出でざわついていた。