木本 桂春
2年前のこと、長年の山友の中に「千メートル以上の山に登らない。それ以下の三角点を目指す」と言い出し、海抜1000m以下の三角点へ上りはじめた。
それ以来、付き合い山行をしている。低山の山麓は人が去り、地図を読み、山を考え、体力も使う山登りは老人にとって楽しいことが多い。
10月14日、お隣の新潟県糸魚川市の姫川支流の小滝、根知の低山の秋と三角点の探索に行く。
人には出合うことのない、静かな秋を楽しめた。小滝川の支流を廃村となった野口集落へ車で入る。ここから標高604mの三角点・点名:清水山を目指す。
林道終点から右手の沢に入り、落ち葉と獣道の混じる斜面を上り、550m位で送電線点検道に合流。ここから清水山に向かう尾根上は藪が行く手を阻む。古い鉈目を見つけそれに沿い、40分位でブナ林の中に三角点を見つけた。辺りは見通しが悪い。木々の隙間から雨飾山、明星山が見えた。
点名:清水山・三等三角点
木を横に倒して見た明星山
明星山を至近距離で見上げ、岩壁と紅葉の頂上にはうなった。
その昔、岩壁の初登攀を都会のクライマーと競い合ったことを思い出した。下山は、点検道からあっさり下山。
続いて車で根知の梶山へ移動。
糸魚川駒ヶ岳の南東山麓にあたる根知川左岸の梶山集落は昭和40年代に廃村となる。当時の五万分の1地図には梶山の集落は4カ所に総数25戸ほど見られる。かすかに残る林道を車で5分すすみ車を置く。
地図で目標を定める標高483mの三等三角点、点名:白池。距離は約1km。歩きはじめてすぐに背丈を越す薮に突入。地図とコンパスを見ながらあとは勘で藪を掻き分ける。廃棄された田畑は茅と葛の葉、小柴に覆われている。この中を潜り、たぐりして頑張る。西方向の中俣川側の杉林へ突入し、ようやく藪を逃れる。杉林の尾根を150m程直上で運よく三寸ほど頭を出した三角点を足元に見つけた。
点名:白池・三等三角点
廃田から駒ヶ岳
下山中の草に覆われた廃田から見上げた駒ヶ岳。
駒は何百年か続いた人々の生活を見てきた。今は、誰も住むことのない廃村を見おろしている。三角点設置から115年が経ってしまっている、梶山の再生はありえないのか。考えながら、4時間の藪山潜りを終えた。